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個別労働関係紛争解決促進法に基づいて、
労働条件その他労働関係に関する事項に
ついて自主的には解決を図れないような紛
争について、迅速かつ柔軟な解決を促進す
るために、都道府県労働局に設置された紛
争調整委員会からなるあっせん委員の仲
裁の下、双方の互譲の精神に基づくよる合
意を通じて、個別の労使間の紛争の解決を
図る制度です。
労働者個人と会社との労働条件やその他
労働に関する事項ついての争いのことであ
り、具体的には以下のような紛争がありま
す。
1.労働条件に関する紛争
⇒解雇,雇止め,配置転換,出向,就業規
則の変更による労働条件の不利益変更,
賃金の引き下げ,労働条件に関わる差別的
取扱い等
2.就業環境に関する紛争
⇒セクシャルハラスメント(平成19年4
月からは均等室による調停),いじめ等
3.就業環境に関する紛争
⇒企業合併などによる労働契約の承継,競
業避止特約等
4.募集・採用に関する紛争
⇒差別的採用,内定取り消し等
5.その他広範な紛争
⇒賃金不払い,解雇予告手当,労働・社会
保険の手続き怠慢に関する損害賠償,雇用
保障期間に関わる賃金補償,退職による研
修費等の返還等
この制度を利用する利点としては、裁判制
度を利用する場合と比較して主に次のよう
な利点があります。
1.迅速
⇒裁判で判決を得る場合には約8ヶ月か
ら1年、控訴した場合には更に1年、合計で
約2年ほどの期間を要します。対して、
労働局のあっせん制度は申請からあっせ
ん期日まで約1ヵ月半程度、あっせん案の
受け入れまでも含めても約2ヶ月程度で解
決します。
2.低廉
⇒労働局のあっせん制度は申請料0円、つ
まり申請に要する費用はかかりません。
3.後に尾を引かない
⇒あっせん制度はあくまで当事者の合意に
よる解決制度ですから、裁判の判決のよう
に白黒をつけるわけではなく、したがって
勝ち負けという概念がありません。後に
遺恨を残しません。
4.個人の労働者との話し合い
⇒事業主にとっては労働組合との団体交渉
ではなく、あくまでも個人労働者との話し
合いですので、精神的肉体的負荷が相対的
に小さくて済みます。
5.以上の理由により
⇒あっせん制度は敷居が高くなく、個人労
働者・事業主双方に利用しやすい制度とい
えます。
この制度は、あっせん委員の仲裁の下、
当事者の自主的合意を前提とした個別的
労使紛争解決制度ですから、一方の当事
者が、あっせんの参加を拒否したり、あっ
せんに参加したとしても、あっせん案の受
け入れを拒否したりすると、あっせん不調
となり打ち切りとなります。
また、解決に至った場合の合意の内容は
民事上の和解ですから、裁判上の和解と
異なり、当事者の債務不履行の場合に裁
判所に強制執行を申立て、強制的に利益
を実現することができません。
1.あっせんの当事者からあっせんの申請
があると、労働局の総務部企画室で申請
内容があっせんにふさわしいかどうか検討
され、ふさわしいと判断されれば、都道府
県紛争調整委員会にあっせんを行わせる
こと通知しあっせん手続きが開始されま
す。
2.手続きの開始は申請人(申請を行った
当事者)および被申請人(一方の当事者)
に通知されます。
3.被申請人があっせんに参加しない旨を
表示するとあっせんは打ち切りとなりま
す。
4.被申請人があっせんに参加する旨の返
事を労働局に行うと、あっせん期日が指定
されます。
5.社会保険労務士(平成19年4月から
は特定社会保険労務士)等にあっせんを代
理させる場合にはあっせん期日の概ね1週
間前までに代理人許可申請を行います。
6.期日には1名のあっせん委員が申請
人、被申請人の言い分を交互に聴取しま
す。
7.あっせん委員は申請人、被申請人の言
い分を聞いた上であっせん可能と判断した
場合には、法律上の問題や裁判に至った場
合の予想される判決等を勘案して、申請
人、被申請人の互譲に期待してあっせん
案の内容を申請人、被申請人に告げます。
8.申請人、被申請人があっせん案を受け
入れればあっせん成立、和解となります。
申請人、被申請人のどちらか一方或いは双
方があっせん案の受け入れを拒否した場合
には、あっせん不調、打ち切りとなりま
す。
申請を行う場合には、あっせん申請書を作
成して労働局に提出する必要があります。
申請書には、申請人、被申請人の氏名(会
社名)住所などの他、あっせんを求める事
項とその理由を明記しなければなりませ
ん。
あっせんを求める事項とその理由について
は、申請書に添付の陳述書として具体的に
あっせんを求める趣旨、その原因、事実関
係、違法性、主張内容の正当性等を論理的
に記述する必要があります。
必要があれば、疎明資料、証明資料を調整
し陳述書に添付することも重要になってきます。
あっせんは期日一回です。到底一回の期日
であっせん委員の心証を形成することはで
きません。事前にあっせん委員の心証をあ
る程度形成し、申請人の意図する解決にな
るべく近いあっせん案を提示して貰えるよ
うにするには、あっせん申請書・陳述書を
充実することがきわめて重要になってく
るのです。
この制度では特定社会保険労務士や弁護
士が当事者を代理することが認められてい
ます。この代理人は、紛争の当事者に代わ
って、あっせんに係る事務手続きから、陳
述書の作成、証拠・疎明資料の調整、あっ
せん期日の意見陳述の代理、等を行うこと
ができます。
あっせん制度は基本的に個人でも利用し
やすい制度です。裁判制度と比較して、
それはなおさらのことです。しかし、より
正確に迅速に、そして当事者が認識してい
ない当事者に帰す利益を特定社会保険労
務士等の代理人は、専門家として当事者
に提供できます。
つまり、煩わし事務手続き、証拠・疎明資
料の調整、陳述書の作成あっせん期日の
意見陳述、などから開放されます。
個別的労使紛争は都道府県労働局の紛
争調整委員会によるあっせん制度を利用
することによって迅速に解決を図ることが
できます。
制度を利用するにはあっせん申請書を提出
しなければなりません。あっせん申請書
は、紛争当事者に関する事項、あっせんを
求める事項およびその理由、紛争の経過、
その他参考となる事項、という項目からな
っています。
あっせんは原則期日1回限りです。訴訟の
ように口頭弁論期日ごとに準備書面をその
都度準備して、自らに有利な結果に導くと
いう事はできません。
期日1回限りのあっせんであっせん委員
の心証を得る為には事前に提出するあっせ
ん申請書の内容、特にあっせんを求める事
項およびその理由を、充実させておくこと
が非常に重要になってきます。
そのためには、あっせん申請書の提出だけ
では不十分です。
あっせんを求める事項およびその理由につ
いては、別途陳述書を以って、詳しく記述
することが必要となってきます。
この陳述書は万が一あっせんが不調に終
わり打ち切られた場合に、紛争解決交渉
の代替的手段としての、司法上の解決制
度である、労働審判の申立書や通常訴訟
の訴状の基礎となるものです。
従って、労働審判の申立書や訴訟の訴状の
内容に準じた記述方法にしておく必要があ
ります。
陳述書は自らの主張の正当性を、縷々述べ
るものです。ですからその主張の正当性を
根拠付ける資料、裁判の場合でいう証拠
を、適宜必要に応じて調整し陳述書に添付
しなければなりません。
もちろん、あっせんは裁判ではありません
から、裁判で求められるような証拠を準備
する必要はありません。
しかし、真実たる事実こそ、動かしよう
のないものはありません。
そして、真実にこそ人としての情も働く。
陳述書はこのような条件を満たすもので
なければならない、そう考えます。
無断転載・複製禁止 社会保険労務士おくむらおふぃす
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