|
労働基準法によると「この法律で賃金と
は、賃金、給料、手当、賞与、その他名
称の如何を問わず、労働の対償として使用
者が労働者に支払うすべてのものをいう」
とあります。
労働の対償として支払われるものですか
ら、基本給、日給、時給といった労働する
ことによって当然に支払われるものはもち
ろん賃金となります。さらに、労働するこ
とによって付随的に生じるもの、例えば通
勤手当や、住宅手当、扶養手当、皆勤手当
といったものも、労働の直接の対価とはい
えませんが、労働に付随して生じるもので
すから賃金となります。また、賞与や退職
金は、それが就業規則に支給が明示され
ていたりまたは慣習として支払われている
ような場合には、賃金となります。賃金と
ならないものとしては結婚祝い金や死亡
弔慰金といった、使用者や事業主が私的
に支給するものなどが当てはまります。
ただしこれらのものも就業規則等によって
支給が条件とともに明示されているような
場合は賃金となります。
割増賃金とは、労働基準法によって定めら
れた法定労働時間を超えて働いた場合、
法定休日に出勤して働いた場合、深夜10
時以降翌朝5時までの間に働いた場合に
通常の時間当たりの賃金にさらに上乗せを
して支払われる賃金のことを言います。も
ちろん割増賃金はその支払の要件の満た
した場合には当然に支払われなければな
りません。近年サービス残業等が問題に
なっていますが、残業に対して賃金が支払
われているからサービス残業には当てはま
らないと思っておられる方もいるのではな
いかと思いますが、法定時間外労働に対し
ては通常の賃金に更に割り増しした部分を
加えて支給されなければなりませんから注
意が必要です。
具体的にはまず労働時間について労働基
準法第32条において、使用者は1週間に
ついて40時間を超えて、1週間の各日に
ついては1日について8時間を超えて労働
者を労働させてはいけないことになってい
ます。休日については使用者は労働基準
法第35条により1週間に1日または4週
間を通じて4日の休日を与えなければなら
ないことになっています。しかし業務の都
合上この法定時間や法定休日では業務の
遂行に支障をきたすことがあります。そこ
で、労働基準法第33条で、災害など避け
ることのできない理由で労働基準監督所
長の許可を得た場合(事態急迫につき事
前に許可を得られない場合は事後遅滞な
く)は、労働基準法第32条や第35条に
係りなく労働者に労働時間を超えてまたは
休日に働いてもらうことができます。仕事
が忙しい場合には労働基準法第36条によ
り使用者と労働者の間で労使協定を締結し
その協定書を労働基準監督署長に届け出
て、就業規則等に残業または休日出勤を
命じる事がある旨明示することで、やはり
労働者に法定時間を超えてまたは法定休
日に働いてもらうことができます。
時間外や休日、深夜労働に対する割増率に
ついては、まず時間外労働については、通
常の賃金の2割5分以上、休日労働につい
ては3割5分以上、深夜労働については2
割5分以上の割増賃金が支払われなくて
はいけません。さらに時間外労働が深夜に
及んだ場合は5割以上、休日労働が深夜
に及んだ場合は6割以上の割増賃金が支
払われなければなりません。尚休日に時間
外労働をした場合でも時間外労働に対する
割り増しを休日労働に対する割り増し賃金
に上積みする必要はありません。
使用者が労働者に対して支払う賃金を決
定する場合には、守らなければならないル
ールがいくつかあります。まず、差別的取
扱いの禁止というルールがあります。労働
基準法第3条では、労働者の国籍、信条
又は社会的身分を理由として、賃金、労
働時間、その他労働条件について、差別的
取扱いをしてはならない、とあります。そ
れに続く第4条では、使用者は、労働者が
女性であることを理由として、賃金につい
て、男性と差別的取扱いをしてはならな
い、とあります。ここで差別的取扱いと
は、職務能力、勤続年数、年齢等を理由と
して賃金に違いがあるのは当然のことでこ
こで言う差別的取扱いには当たりません
が、他の条件がまったく等しいときに男
性は月給制女性は日給制にするといった
ような取り扱いは差別的取扱いになりま
す。また就業規則や賃金規定上は男女間
に差別的待遇派に場合でも、実際の取り扱
いにおいて、男性と女性の間で差別的取扱
いがあるような場合も当然、違反となります。
その他、賃金は最低賃金法により、都道府
県ごとに最低賃金額が決められていますの
で、その最低賃金額を下回る賃金を設定す
ることはできません。
賃金の支払いについては労働基準法第24
条により支払いの方法が規定されていま
す。
まず、賃金は通貨で直接労働者にその全額
が支払われなくてはいけません。現物給付
はもちろん、手形や小切手で支払われるこ
とも原則として禁止されています。給与の
口座振込みについては、労働者の同意を得
た上で、労働者が指定する銀行その他の金
融機関への預貯金への振込み、証券会社
への労働者への預かり金への振込みが可
能です。労働協約がある場合には通貨以外
のもので支払うこともできます。また退職
金については、労働者の同意を得た上で、
銀行を支払人とする小切手又は銀行が支払
保証をした小切手、又は郵便為替で支払う
こともできます。
賃金の支払いは労働者に支払うことが原
則で労働者の代理人に支払いことは禁止
されています。ただし労働者の使者として
労働者の妻に支払うことは許されていま
す。
賃金の全額払いは、法令により、所得税や
社会保険料を控除すること、労使協定によ
り、購買代金、社宅、寮その他福利、厚生
施設の費用、社内預金、組合費等、その
控除されるものの内容が明らかなものを控
除することは許されています。また前月分
の賃金の過払いを当月分の賃金から清算
する事は違反ではありません。遅刻や早
退、欠勤等により労働時間、賃金額に端数
が生じた場合、例えば5分の遅刻を30分
の遅刻として取り扱うことは賃金の全額払
いの原則に違反しています。ただし就業規
則等により、減給の制裁として賃金をカッ
トする場合は違反とはなりません。
賃金は毎月一回以上、一定の期日を定めて
支払われなければなりません。したがって
例えば賃金を年俸制にした場合でも、その
賃金は月々に分割して毎月の一定期日に
支払われなくてはなりません。支払期日は
具体的に定められていなければなりませ
ん。
無断転載・複製禁止 社会保険労務士おくむらおふぃす
|